BMW・F800GSというモデル名は、2007年と2023年の2度発表された。いずれも、並列2気筒エンジンを登載したミドルクラスのアドベンチャーモデルで、前者の排気量は798cc、後者は895cc。同じアドベンチャーモデルとはいえ、キャラクターには違いがあった。それは、この時代のF-GSには、不整地走行を得意とするタイプ(フロント21インチでスポークホイール)と、オンロード寄りのタイプ(フロント19インチでキャストホイール)が併存しており、2007年発表のF800GSは21インチでスポークホイール、2023年発表のF800GSは19インチのキャストホイールを採用したモデルだったこと。まずは、2007年発表のF800Gについて。2007年秋のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で発表された(日本市場では2009年発売)。同時に、F650GSという姉妹モデルも発表された。この両車が搭載したエンジンは、排気量798ccの水冷並列2気筒DOHCユニットで、2006年に発売されたF800S/STと同系統。ボンバルティア・ロータックスと共同で開発されたフラットツインエンジンだった。なお、F650GSは「数字」のために650ccと混同されることがあるが、2気筒エンジンを搭載するようになってからは、F800GSと同じ798cc。F800GSとF650GSは、同じGS(ゲレンデ・シュトラッセ)モデルでありながら、キャラクター設定が異なっていた。F800GSは、F650GSよりも、あきらかにオフロード走行指向が強められたモデルで、ワイヤースポークホイールを履き(衝撃吸収性が高くオフロード車向き)、フロントホイールは、F650GSの19インチに対して21インチで(径が大きいことで、悪路走破性と安定性が向上)、倒立タイプのフロントフォーク(路面からの入力に強い)が採用されていた。また、先行したF800シリーズとは異なり、チェーン駆動を採用(F650GSも)していた。2013年モデルでモデルチェンジを受け、各部がアップデートされ、シュラウド形状など外観デザインも変更された。但し、この時のモデルチェンジは、姉妹モデルのためのものであり、ここで、単気筒エンジン時代から使っていたF650GSというモデル名は、F700GSに変更された(それでも、排気量はF800GSと同じ798cc)。F800GSにとって大きかったことは、このモデルチェンジの後に、派生モデルとしてF800GSアドベンチャーが登場したことだった(別項)。2017年のEICMAに、F800GSの後継モデルとしてF850GS(853cc)が登場。F800GSは、2018年モデルまで設定され、11年のモデルライフに幕を下ろした。※日本市場で2017年9月1日以降に出荷された車両には、ETC車載器が標準搭載された。それから数年が経った2023年9月、新型モデルとして、再びF800GSが発表された。これまでのF750GSの後継モデルとしての「新型」だった。水冷4ストローク並列2気筒エンジンの排気量は、前モデルまでの853ccから、895ccに拡大された。これは、シリンダーボアが84ミリから86ミリに拡張されたことによるものだった(ピストンストロークは77ミリで変わっていない)。フロントに19インチ、リアに17インチのキャストホイールを採用するなどの基本的なキャラクターは、F750GSから継承していた。同時に、フロントに21インチ/リア17インチの前後スポークホイールを採用したF900GS及びアドベンチャーも発表された。(詳細情報は追記予定)