BMWのF800Sは、2006年モデルとして新登場したミドルクラスのロードスポーツだった。搭載したのは、排気量798ccの水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジンで、ボンバルディア・ロータックス社(オーストリア)と共同開発されたもの。いわゆる「パラレルツインエンジン」の採用は、BMWとしては初めてのことだった。後輪駆動方式はベルトドライブで、F650CSスカーバーから導入されたもの。スカーバーからは、低重心化を目的とした燃料タンク位置(シート下)も継承していた。F800Sは、ハーフフェアリングとセパレートハンドルがセットされた「スポーツ」モデルで、その対となるかたちで、大きめのスクリーンとフェアリング、アップライトなバーハンドルを採用したツーリング仕様のF800STも同時に発表され、パラレルツイン搭載の新生Fシリーズは、この2モデルからスタートした。ロードスポーツ・カテゴリーのFシリーズは、F800R(2009年-)、F800GT(2013年-)と続いていったが、F800Sは、F800R登場に前後して、ランナップから姿を消した。