イーハトーブTL125Sは、「銀河鉄道の夜」や「風の又三郎」などで知られる詩人・作家の宮沢賢治が、その理想郷として、ふるさとの岩手県から名付けたとされる「イーハトーブ」を、そのままモデル名にした、トレッキングバイク。発売されたのは1981年4月のことで、同じ年の3月に登場したばかりのシルクロードに続くトレッキングモデルだった。シルクロードとイーハトーブの違いは、前者がランドスポーツ(オフロードトレール)ベースだったのに対し、イーハトーブはトライアルバイクのバイアルスTL125の系譜に連なるモデルだったこと。4.5リッターの小さい(薄い)燃料タンクも、265mmもある最低地上高も、21インチのフロントホイールも、低速重視のギア比も、その出自を伺わせるに足るものばかりだった(そもそも、見た目がトライアルバイク)。エンジンは、排気量124ccの空冷4スト単気筒OHCユニットで、CDI点火を採用し、ミッションは5段リターン式、乾燥重量は95kgと軽量だった。モデルチェンジなどを受けることなく、一代限りで生産を終えた。