BMWのF800STは、2006年モデルとして新登場したミドルクラスのツーリングスポーツだった。搭載したのは、排気量798ccの水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジンで、ボンバルディア・ロータックス社(オーストリア)と共同開発されたもの。いわゆる「パラレルツインエンジン」の採用は、BMWとしては初めてのことだった。後輪駆動方式はベルトドライブで、F650CSスカーバーから導入されたもの。スカーバーからは、低重心化を目的とした燃料タンク位置(シート下)も継承していた。F800STには、F800Sという姉妹モデルが同時に登場したが、両車のキャラクター差異は、ツーリング仕様のF800STと、ロードスポーツのF800S。これは、ほぼ同じ時期のR1200STとR1200Sとの関係に近いものだった。とはいえ、F800STのヘッドライト形状は、R1200STのような独特なものではなく、ごく一般的な形だった。2000年代後半にスタートしたパラレルツイン搭載の新生Fシリーズは、F800ST/Sを手始めに、ラインナップを拡充していった。F800STのツーリング仕様を受け継いだのは、2013年に発売されたF800GTだった。