1991年10月に登場したゼルビス(XELVIS)は、VT250F(1982年)以来続いたVT250シリーズの7世代目モデルだった。直前(6世代目)のVT250スパーダが、シンプルなネイキッドスタイルだったのに対し、ゼルビスは大柄なハーフカウルを備えたツアラー的スタイル。ツアラー的なのは見た目だけではなく、スパーダよりも50ミリ延長されたホイールベースや、二次減速比、キャスター角などからも判断できた。翌92年にカラーチェンジを行ったあと、生産終了。高性能なスーパースポーツや、その対極にあるようなバイクらしいスタイルを持つネイキッドが人気を集めていた90年代初頭において、どちらでもないゼルビスは、その汎用性の高さを見せることができなかったと思われる。その後、ホンダ250ccV型2気筒エンジン搭載のスポールモデルは、1998年1月にデビューするVTR(250)まで待たねばならなかった。余談ながら、新車販売が終わったあと、ゼルビスはバイク便ライダーの愛車として用いられるケースが少なくなかった。2気筒らしい市街地での扱いやすさ、カウル効果による高速走行の快適さなどが好まれてのことだ。