CRM250Rが発展的にモデルチェンジするかたちで、1997年1月に登場したCRM250AR。ホンダにとって最後の250cc2ストオフロードトレールとなった。CRM250ARは、1989年以来続いたCRM250Rの最終モデルとしてとらえることもできるが、車名にも用いられた「AR燃焼」という2ストエンジンの環境負荷を軽減するシステムを採用したという画期のために、バイクブロスでは両者を異なるモデルと設定した。水冷2ストローク単気筒エンジンは、前身のCRM250Rからピストンボアを0.4ミリ拡大することで、軽二輪規格いっぱいの排気量を249ccまでアップ(従来は246cc)させ、ここに、AR燃焼システムを導入。ARは、Activated Radicalの頭文字をとったもので、ごく簡単に説明すれば、燃焼後のシリンダー内に残った残留ガス内の遊離基(ゆうりき・フリーラジカル)を利用して、シリンダー内に導かれた新しい混合気に自己着火を行なわせるというもの。従来の2ストエンジン開発では、自己着火現象は防止すべきとされていたが、それを逆利用することで燃焼効率を上げ、排ガスに含まれる炭化水素(HC)などを低減するとともに、燃費も向上させようというものだった。その結果、AR燃焼を採用したCRM250ARは、従来モデルに比べてHC濃度は半減し、燃費も大きく向上していた。オフロードバイクとしてのシャシー構造に関しては、フレーム剛性のアップやリアサスのストロークアップによって走破性を高め、ヘッドライトの光量もアップされていた。画期的なAR燃焼エンジンを搭載して登場したCRM250ARだったが、登場年の12月に、カラーチェンジを受け、それがそのまま最終仕様となった。