NS400Rは、1985年5月に発売された、排気量387ccの水冷2ストV型3気筒エンジンを搭載するレーサーレプリカモデルだった。レプリカの元となったのは、当時のロードレース世界選手権(WGP)500ccクラスに参戦していたワークスレーサーのNS500(V型3気筒)。正確に言えば、NS400R発売時には、V4エンジンのNSR500がワークスレーサーの主力になってはいたが、GP500で83年84年とメーカータイトルを獲得したNS500のレーサーレプリカが、翌年に登場するのは当然ではあったし、だからこそ、400㏄クラスの2ストエンジンに、V3というレイアウトの市販モデルがラインナップされた歴史が残されることにもなった。なお、V3の構成は、クランクケースの前方水平に2気筒、後方に1気筒で、Vバンクの挟み角は90度だった。レーサーレプリカではあっても、ロードゴーイングモデルではあるので、使いやすい低中速トルクを持ちながら、59psの最高出力を8,500回転時に発生させていた。アンチノーズダイブ機構を備えるフロントフォークには、エアアシストサスペンションを採用。前後ホイールは、オールアルミ製のコムスターホイールとして、バネ下重量を軽減していた。NS250Rは、NSR250Rへと進化していったが、NS400Rに後継モデルが登場することなく、一代限りで生産を終えた。