1982年9月に発売された250TマスターS・Dは、前年11月に登場していた250Tマスターからの派生モデル。アメリカンスタイルや、排気量233ccの空冷4スト並列2気筒エンジン、5速ミッション、前後のドラムブレーキなどは同一ながら、250TマスターS・Dは、250Tマスターのチェーン駆動に代えて、ベルトドライブ式を採用していた。これにより、チェーンが発する金属音がなくなり、静粛性が向上するとともに、ベルトの弾力特性によって、ギアチェンジやクラッチ接続によるショックも緩和されて、スムーズな走行が可能とされた。なお、250TマスターS・Dに採用されたポリウレタン製のベルトには、補強材としてケブラーコードが組み合わされていた。ケブラーコードは、米国航空宇宙局(NASA)がスペースシャトル(1981年から2010年代初めまで運用されていた再利用式の有人宇宙船)の補強材として用いていたもので、当時の先端素材でもあった。