カワサキのアメリカンクルーザーシリーズにおいてバルカンは、伝統的な「クルーザーらしい」キャラクターで展開されることが多かったが、2016年モデルに新登場したバルカンS(650cc)は、その枠を軽々と越えたデザインとコンセプトが示されていた。カワサキ曰く「ファンライディングアーバンラインナー」。これまでのカテゴリーの枠にとらわれることなく、新しいスタイルを求めたモデルということだった。エンジンも、クルーザーらしいV型ではなく、並列2気筒(パラレルツイン)を搭載。ER650(ER-6n・ER-6f・ニンジャ650・ヴェルシス650)用ユニットを低中速トルク重視にチューイングしたものだった。ER650シリーズとの共通点は、右側にオフセットされたリアショックの配置からも見てとれた。流線型のロー&ロングデザインとスポーツバイク譲りのパワートレイン、軽快なハンドリングを持つバルカンSは、ライバル不在のカワサキらしいパフォーマンスクルーザーだった。同時にABS装備モデルもラインナップ。2017年には若干の仕様変更を受け、メーターにギアポジションインジーケーターを表示するようになった。また、機能的な変更ではないが、触媒の改良によってユーロ4(欧州の排出ガス規制)に対応していた。2018年モデルは設定されなかったが、2019年モデルとして平成28年規制に適合し、生産が継続された。2022年モデルでは、さらに平成32年(令和2年)排出ガス規制に適合。最大トルク値や燃費表示が若干変更となったが、主要な諸元・性能に変更はなかった。2023年、2024年モデルはラインナップされなかったが、2025年モデル(2024年9月発売)は設定された。