ムルティストラーダ1000は、スポーツバイクメーカーとしてのドゥカティが作り上げたマルチパーパスモデルとして、2003年に発売された。これ以降、シリーズとして長く続き、さまざまなモデルを生み出したムルティストラーダ・シリーズの始祖となった。モデル名を英語でいえば「マルチストリート」という意味であり、ストリートにおける様々なタイプの道を、スポーティに走ることができるということを表していた。見た目こそ、ドゥカティらしいスポーツバイクではないが、排気量992ccのエンジンは、90°のシリンダー挟み角を持つL型2気筒で、デスモドローミックでバルブを駆動していたところや、トレリスフレーム、乾式クラッチなどは、当時のドゥカティらしさそのもの。また、倒立式のフロントフォークや、リアの片持ち式スイングアーム、センターアップのマフラーなどの要素も、それぞれを見ればまるでスーパースポーツのようだった。なお、ムルティストラーダ1000DSと表記されることがあり、車体にもそのように表記されているが、DSは、1気筒あたり2本の点火プラグを持つ「デュアル・スパーク」を表していた。この項では、ムルティストラーダ1000で統一した。