屋根なしなのが二輪車の常ながら、ときどき「ではない」モデルが登場することがある。1994年9月に発売された「キャビーナ」もそのひとつ。スクータータイプの車体の上には、ウインドスクリーンから伸びたかたちの屋根(ルーフ)があり、そのウインドスクリーンには、クルマのようなワイパーが取り付けられていた。大雨ならいざ知らず、ちょっとした雨ならレインコートも不要で、ワイパーを動かせば、雨だれで前が見えないこともなかった。屋根とワイパーが付くといえば、ジャイロキャノピー(1990年)が先行していたが、ビジネスユース中心のジャイロキャノピーに対し、キャビーナはパーソナルユースを想定したモデル。それは、新車プレスリリースの説明文において「シート下にはテニスラケットなどが収納できる」とあったことからも明らかだった。キャビーナ90は、排気量89ccの空冷2スト単気筒エンジンを搭載した原付2種モデル。通常であれば二人乗りも可能な原付2種ながら、キャビーナ90はその形状から、一人乗り仕様だった。キャビーナには、このほかに2スト49ccエンジン搭載のキャビーナ50及び電動スタンドアップ機構付きのキャビーナ・スタンドアップ50もラインナップされていた。また、翌95年には、キャビーナの屋根とワイパーを外したかたちのスクーターが、「ブロード90(50)」として登場した。