R100RSの登場によって、BMWモトラッドのイメージは、もはや安全な高速クルージングとは切り離せないものとなっていた。高い耐久性と、可能な限り長い距離を快適に移動すること。それがユーザーから求められたニーズであり、メーカーとしても見過ごせないキーワードとなっていた。R100RSに採用されたフェアリングは、ライダーを風雨から守り、走行時における快適性がズバ抜けて優れていたことは言うまでもない。しかしイメージとして、R100RSはあまりにもハイスピードという印象が強かったのだ。ユーザーニーズはスピードから快適性へと移り、あらゆる自然状況においてもより速く、安全かつ快適に移動できる手段をBMWに求めていた。そしてその答えとして、BMWはR100RTを登場させた。R100RSよりも傾斜のゆるいスクリーン、エアロダイナミズムよりもウィンドプロテクション効果を高めたフェアリングなど、スピードよりも快適性を追求した装備で当時のユーザーニーズに応えたのだ。この装備によって、車重はR100RSよりも4kg増えたが、それに見合うサスペンションが与えられ、BMW本来の走行性能は保たれている。