1974年に発売された、スズキRE-5(アール・イー・ファイブ)は、ロータリーエンジンを搭載し、市販された日本車唯一のモデルだった。ロータリーエンジンの二輪車は世界的にも希少で、バイク工業史に残る存在となった。通常のレシプロエンジンがピストンの上下運動を行うのに対し、円運動を行うロータリーエンジンは、夢のエンジンと呼ばれ、スズキは、ロータリーエンジンの特許を持っていた西ドイツ(当時)のNSU・バンケル社とライセンス契約を結び、3年余りの開発期間を経て、市販化に漕ぎつけた。エンジンの排気量は497ccで、ローター数は1つ。おむすび型をしたローターは、それが収まるハウジングの中で、3ヶ所の空間を作り、その中で同時に「吸気」「圧縮・爆発」「排気」を行うため、あえてレシプロエンジンに相当させるならば、3気筒のようなものだと言えた。円運動を行うため振動が少ないなどのメリットで、夢のエンジンと考えられていたが、オイルショックの影響や、ハウジングとローターの接点となる3点のシールの問題などで、バイクでもクルマでも、広く使われることなく、その結果、RE-5は孤高のロータリーエンジン搭載車ということになった。なお、RE-5は海外でのみ販売されたが、497ccの排気量は、ロータリーとレシプロの排気量換算ルール(×1.5)では、750cc相当になるため、国内排気量の上限規制があった当時、国内販売も計画されていたことが伺えた。RE-5の販売期間は短かったが、の初期型と、マイナーチェンジした後期型が存在。メーターケースの形状が異なっていた。