「スクーターでありながら、マニュアル変速」というモデルといえば、古いベスパ(ハンドシフト)などがあったが、まさかの20世紀末に登場したマニュアル変速スクーター、それが1999年8月発売のジョルカブだった。ジョルカブというモデル名は、ジョルノとスーパーカブを組みあわせたもの。レトロタイプスクーターのジョルノに、スーパーカブ50のエンジンや駆動系を組みあわせたところからのネーミングだった。スクーターのジョルノは、92年に発売された初代モデル(2スト)が、4ストエンジンを搭載するにあたり名称を「ジョルノ・クレア」に改めており(99年6月)、その2か月後に登場したカブエンジン搭載のジョルカブで、ジョルノ=4ストのイメージは、より確かなものとなった。外観こそスクーターながら、中身はスーパーカブなので、フロアの左側にはギアチェンジ用のペダルがあり、クラッチ操作のいらない自動遠心式で変速可能なのも、スーパーカブと同じだった。スーパーカブエンジンの大きなメリットは、圧倒的な燃費性能にあり、同時代のジョルノ・クレアが61.4km/Lだったのに対し、ジョルカブは110km/L(ともに30km/h定地走行値)。単純比較はできないが、ジョルカブの数値は、他社のスクーターと比べても圧倒的だった。しかしながら、2001年にボディカラーの追加を行ったのみで、カタログラインナップから外れていった。ジョルノでもあり、スーパーカブでもある、という部分では、本当の意味での「フュージョン」はジョルカブということができた。