1985年10月に発売されたジャイロUP(アップ)は、近距離の小荷物配達業務などに使い勝手のよいビジネスユースモデルだった。82年に登場していたジャイロXが、後二輪の「スリーター」ならではの走行安定性を、不整地や雪道で発揮することを想定していたのに対し、その安定性を、積載性の高さに振り向けたモデルといえた。ジャイロXと比べて明らかに低い、低床設計のリアデッキは、荷物の積み降ろしが容易なことと、重心を低くするためのもの。車名の「アップ」は、積載量をアップさせたことに由来するとされた。91年にはエンジン出力を向上させるとともに、シートの厚みを増すなどの変更を受け、2000年には排出ガス規制をクリアするためのマイナーチェンジを経て、生産が継続されたが、次の規制をクリアする前の2007年までに生産が終了した。そのため、ジャイロアップは、2ストロークエンジン搭載モデルのみが存在する。なお、GYROはG(グレート・偉大な)、Y(ユアーズ・あなたの)、R(レクレーショナル・娯楽の)、O(オリジナル・独特の)という頭文字に由来するとされていたが(ジャイロXデビュー時)、娯楽ではなくビジネス用途車が最初のバリエーションモデルになるということになった。